【転載】海外ファンドの中国国内不動産投資の税務対策 第二回 中倫律師事務所

【転載】海外ファンドの中国国内不動産投資の税務対策 第二回 中倫律師事務所

海外ファンドの中国国内不動産投資の税務対策(第二回)

中倫律師事務所

2017/9/22 『中倫視界』より転載

中倫律師事務所は、国際的な不動産ファンドの中国における不動産プロジェクトの買収と売却にかかわる税務問題に対処した実績が多数あり、理論と実践に精通している。

本レポートは、前回に引き続き、中国の現行税制の下で、海外不動産投資ファンドが中国国内不動産投資を行う際にかかわる税務の要点を簡単に紹介し、税務対策の提案を試みることで、当所の見解と経験を提供することを目的とするものである。不動産投資ファンドのご参考になれば幸いである。

 

二.    プロジェクト会社の利益の本国への送金と税務対策

 

 海外投資者が、中国国内の対象物件の保有期間において、最も関心が高いのは、利益の本国への送金にあたっての税負担であろう。現行法の下、海外不動産投資ファンドは、主に、配当金と関連者に貸し付けた金銭の利息から本国へ送金する利益を得ている(注:200761日以後に商務部門の批准証書を取得し、商務部へ届出た外商投資不動産企業は、国外からの融資を禁止されている。)。

 

配当

 外国株主は、配当金総額の10%の所得税を源泉徴収される。なお、中国と外国株主の所在国(地域)との間に租税条約等がある場合には、更に低い税率が適用される可能性もある。例えば、「内地及び香港特別行政区の所得に関する二重課税回避及び脱税防止に関する手配」によれば、香港の株主が受益所有権者で且つ配当を行う会社の持分を少なくとも25%直接保有する場合、その配当金に課される所得税の税率は5%となる。しかし、上記のとおり、香港の会社が受益所有権者である必要がある。受益所有権者については、中国の税法上厳しい判断基準が設けられており、本書ではこれにつき詳しく言及しないが、総じて言えば、香港の会社が中国国内プロジェクト会社の持分を保有するための中間ペーパーカンパニーである場合には、一般的に受益所有権者とは認められない。

 

利息

 利息所得は、貸付人が国外の者であっても中国国内で所得税を源泉徴収されるが、この場合は10%税率が適用され、租税条約等があれば更に低い税率が適用される可能性もある。例えば、香港の居住者が利息の受益所有権者である場合、香港と中国内陸との上記の「手配」に基づき、その利息所得に課される所得税率は7%まで下がる。尚、受益所有権者に該当するか否かの判断基準は、利息所得の場合にも適用される。

 

 中国の税法上、利息所得の支払いは配当金の支払いとは取扱いが異なる。利息所得は、所得税が源泉徴収されるものの、中国国内プロジェクト会社は支払う利子をコストとして控除できるため、中国国内プロジェクト会社の中国国内での企業所得税の負担を軽減できる。即ち、配当より利子の支払いの方が、利益を本国へ送金する際に税負担を軽減できる方法である。但し、関連者間の融資は独立企業間原則に従う必要があり、同原則に違反した場合、中国国内プロジェクト会社は課税前の控除ができなくなるのでご留意されたい。

 

 なお、貸付人が国外の者である場合は、利息所得に中国国内で所得税の他に6%の増値税が課されるが、中国国内プロジェクト会社は当該増値税の仕入税額控除ができるため、増値税の徴収によって税負担が増えることはない。

 

 もっとも、200761日以降に商務部門の批准証書を取得し、商務部にて届出を完了した外商投資不動産会社については、国外からの融資を禁止されているため、実務上、利子の支払いは稀である。

 

 上記より、海外の不動産投資ファンドは、中国国内不動産投資に先立って中間持株会社の設立地と中国との租税条約や手配の状況を確認し、租税条約や手配を適正且つ有効に利用し、税金コストの最適化を図るべきと考える。しかしながら、配当金の支払いスキームでは全体の税負担が比較的大きく、利子の支払いスキームも難しくなってきているため、プロジェクト会社の利益の本国への送金における税務対策の手段は限られてきているのが現状である。

 

※注;

本内容は、作者個人の見解であり、形式の如何を問わず、北京市中倫律師事務所又は同事務所の弁護士による法律オピニオン又はアドバイスではない(本内容につき更に詳細な意見をお求めの方は、中倫律師事務所まで)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。