昨年末、福岡県福岡市が新たな特別ビザの開始を公表した。「スタートアップビザ(外国人創業活動促進事業)」である。
もともと外国人が訪日するビザには観光や商用、また親戚・知人訪問と言うもののほかに、「経営・管理」ビザと言うものがあった。これは外国人が日本国内に出資、設立した会社での経営を行うためのビザであったが、入国管理局への申請時に、事務所の開設に加え、常勤職員を2人以上雇用するか、資本金の額又は出資の総額が500万円以上という条件が付いており、スタートアップの企業にとってはハードルが高かった。
しかし、今回の福岡市のビザではそうした条件を一時的に緩和し、
1.創業活動計画書等を福岡市に提出
2.要件を満たす見込みがあるなど、福岡市から確認を受ける
3.その確認をもとに入国管理局が審査をすることで、 6ヶ月間の「経営・管理」の在留資格を認定。
としている。
これによって外国人申請者は前述の要件を、認定を受けた6ヶ月間で整えればよく、創業する外国人は事業を進めながら、手続きを進めることができる。
もちろん、その手続きの進捗状況などは福岡市に報告する義務があるが、その期間も市内の「スタートアップカフェ」が支援していくという。
福岡市役所
https://www.city.fukuoka.lg.jp/keizai/r-support/business/startupviza.html
■中国人からの関心 ベンチャースピリッツに響く?
なんとこの情報、先日中国の新聞や上海市のニュース番組で紹介され、すでに同市上海代表所にはそれを見た視聴者から問い合わせの電話が入っているという。
というのも、中国人は「ベンチャーマインド」が非常に高い。会社勤めを「打工(バイト)」と呼び、「他人の金儲けのために働くなら、自分で必死に何かやった方がマシ」という若者も少なくない。機会があれば「自立」を常に考えているのである。
こうしたベンチャー気質旺盛な中国人たちにとって、この特別ビザは魅力的だろう。特に「IT関連の企業誘致」と言う言葉は、中国の若者たちに夢を与えるはずだ。
近年増加する外国人観光客。特に中国人の観光客が大挙して押し寄せ、大量の買いものをしていく様は「爆買」という流行語を生んだ。
しかし、中国人観光客の来日シーズンの分散化や、中国政府の関税強化によって爆買は徐々に沈静化しつつあり(一時に比べてだが)、代わって中国では出来ない体験を求める「爆学」へとシフトしていった。その新たな流行が、福岡市を起点とする猛烈な創業ブーム、すなわち「爆創」となるか、注目したい。
中国の新聞『環球時報』の記事
http://finance.huanqiu.com/cjrd/2016-06/9068074.html
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株式会社ジェイ・シー・アイ
中国ビジネスアドバイザー 森下智史