変革する中国とどう向き合うか

良くも悪くも中国市場が注目されている。その注目のされ方も、期待と不安、相反するものが入り混じっているように見える。そのなかで、日本のビジネス界にも大きな変化が見られた。伊藤忠商事の商社純利益首位奪取。この変化の中にも「中国」がキーワードになっている。2015年年末にあたり、これらの変化を見ながら改めて中国市場との付き合い方を考えてみたい。

中国市場が変革の時を迎えている。
それは近年のメディア報道を通じて誰もが気づいている事柄となった。急に中国関連の露出が多くなり、中国に対して様々な論評がなされているが、筆者が気になったのが2015年11月23日に発売された『日経ビジネス』である。
現在の中国市場とそのなかで業績を伸ばしている「勝ち組企業」の事例が紹介されていたが、単純な中国経済礼賛特集でも、中国経済崩壊論でもなく、中国市場が転換期であること、かつどのような変化が訪れているのかを冷静に分析していた。それを読みながら、改めて中国市場の変化、そしてそれに対する日本企業やメディアの視点が変化していることを強く感じ取ることができた。

 

■伊藤忠の首位奪取の背景を探る

 

同誌で大きなページを割いていたのが伊藤忠商事の事例である。
すでに報道されているように、2015年は商社純利益で三菱商事を抜き、初めて首位に立った。
各種メディアがこれを大きく報道していた。この背景には三菱商事が資源分野での損失によって、予想利益を下方修正したことから、同分野での戦略が明暗を分けたとの論調であった。
その中で筆者が注目したのが金融ニュースの専門誌であるブームバーム誌の記事である。
三菱商事の利益下向き調整に関しては、三菱商事の内野州馬CFOのコメントを引用し、「「中国経済のさらなる減速などを背景に商品市況は期初の想定を超えて低迷しており、早期の回復が見込めないことから現時点で想定される懸 念事項を全て織り込んだ」と説明。豪州での製鉄向け原料炭事業の販売先の2割が中国向けといい、価格低迷などから同事業の悪化に加えて、エネルギー関連を 中心に約200億円の減損損失の計上を見込むことが響く。」と述べ、中国経済減退が三菱商事にマイナスの影響をもたらしたことを紹介している。
しかし、伊藤忠商事に関しては非資源分野の伸びと資源分野からの撤退を紹介しながら、「通期では中国政府系企業、中国中信集団(CITIC)傘下企業への出資に伴う利益貢献も見込む。」という一文が挿入されていた。
伊藤忠商事のCITICへの出資。その相手ももちろんだが6,000億円もの巨額出資に、発表当初は多くが「博打的」といった懐疑的な視点や、不安、さらには「中国に騙されているのでは?」といった声まであったことを記憶している。
この提携の成否、前述の「日経ビジネス」の特集で述べられているように提携は始まったばかりであり、真価が問われるのは2016年以降であるが、現時点では大きなマイナス影響が出ているわけではないように見える

 

■新たな中国の商機をとらえる力を

 

この伊藤忠商事と三菱商事の首位争い。記事を読んでいると、同じく「中国」というキーワードが盛り込まれていながら、異なる結果をもたらしている。伝統的な製造業への資源供給という選択をした企業と、製造業には距離を置きつつ金融やリテール商材といった部分に力を注いだ企業、まさに中国市場に対しての向かい合い方が、その明暗を分けたようにも見受けられる。
それはやはり中国の変革をとらえて、それに合わせた戦略を打ち出せるかという点。
依然として日本で広がっている中国経済「停滞」論。筆者の個人的な見解だが、それは新しい時代(「日経ビジネス」誌でいう「ニューチャイナ」)にむけてハンドルを切るその途中段階であるように見える。方向さえ固まれば、中国はその方向に向けてアクセルを踏む。その過程では、多くの領域で成熟したノウハウを求めてくることになる。とりもなおさず、中国市場における商機である。
この商機の情報をいかに得ていくか。それが日本企業だけではなく、日本経済にも大きなポイントになってくる。
その動きを見つめている伊藤忠も素早い動きを示した。12月に入ってすぐに「社内の4分の1のスタッフを中国語人材に」といった発表、中国市場への展開を加速させていく様子。同社の中国市場向けの次なる一手が、より注目を集めている。
(株式会社ジェイ・シー・アイ)

 

参考記事:http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NXBYXA6KLVR801.html
ブルームバーグ2015/11/05付
『伊藤忠が純利益で初の商社トップへ、三菱商を上回る見通し-今期業績』

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